ソウル(京城) (韓宮懐古)
京城を取囲む長城
入隊後三ヶ月、第一期検閲がすむと初めて外出が許された。戦友山口上等兵に連れられて京城の街を見学した。
朝鮮の最中、西に仁川の要港をひかえ、漢江河畔に栄えた街がソゥルである。
京城の街に入るには先ず南大門の城門をくぐる、この城門を起点として四囲の山山に石の砦がある。
六百年の青史を秘めて蔦からむ
南大門の高楼高し
昔から朝鮮の首都で、市内に景福宮、徳寿宮、昌徳宮など李王朝の宮殿があり。その苑を昌慶苑という、博物館、慶会楼、植物園などがあり春は桜、牡丹でにぎおう。
興亡はさもあらばあれ六百年の
栄古を偲ばす李朝の官殿
宮殿の前庭に、左右大きな水時計があった。直径が二米もあろうかと思われる青銅の水がめがあり、樋で泉水の水が落ちこむようになっており、水がめの中に浮子のついた差尺があって、水が溜るにつれ差尺が上ってくるようになっていた、よく考えたものだと感心した。
山は北漢流れは漢江 可愛妓生さん立膝姿
街にゃ白慢の南大門 唄うアリラン愁心歌
からむ蔦さえ五百年 恋の京城はおぼろ月
ソウル、チヨタ、チヨタ チヨタソルホイ
京城小唄
東西南北に城門があって、月の夜妓生が城門にすがって歌うアリラン哀歌は哀愁の情にたえないものがある。
韓宮懐古
深秋過雁陣営寒 深秋過雁陣営寒し
月照韓官白露溥 月は韓宮を照して白露ふかし
追憶李朝弦管夢 追憶李朝弦管の夢
妓生泣唄亜璃蘭 妓生泣いてアリランを歌う
五百年続いた李王朝は一九一〇年(M43)日韓合併により減びた。
- 妓生
- 遊女
長城の尾根をつづきて谷わたり
ソウルの街は中にひそけし
城門に佇ちて白衣の妓生は
月の下びにアリラン唄う